8番目の男

 

長らく放置したままで忘れ去っていた映画を鑑賞しました。大河ドラマの1回目を身損ねたので、再放送を録画しておこうと久しぶりにブルーレイレコーダーを起動させたのがきっかけです。録画しっぱなしのものは他にもあるのですが、全く記憶になくなぜ録画しているのか、どんな内容なのかチラリとも思い出せなかったのが面白くて見てみることに。タイトルだけで想像するとなんだかハードボイルド的な内容を想像してしまいますが、全く違いました。

 

8番目の男(字幕版)

8番目の男(字幕版)

  • パク・ヒョンシク
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2008年に韓国で初めて導入された国民参与裁判。日本の裁判員制度とは異なる制度で、大変興味深い内容でした。日本の制度と異なるところがいくつか分かりやすく表現されていたのでわかる範囲で上げてみます。

 

1.日本は裁判官と一緒に協議するが韓国は裁判員だけで協議

裁判員のみで協議すると素人に判断させるのか、と疑問が残ります。しかし、裁判官と一緒に協議するとなると、裁判員はどうしてもプロの意見に同調する傾向が強いように感じられます。裁判官の説明があった方が分かりやすくて良いとは思いますが、裁判に対する考え方なども具体的に教えてくれるでしょうから、結局は判例に従うこととなり、一般人が参加する意義が感じられなくなってしまうのではないでしょうか。普段から法曹界に浸かっている人と、全く関わりのない人では感覚が違うので、だからこそ意義があるのかとも思いますが、誰しも初めてのことに関してお手本があるとそれに倣ってしまいますよね。そして参加する方は大抵が初めての方ばかりなわけです。

 

2.日本は裁判員と裁判官が同等の権限を有しているが、韓国の裁判官は裁判員の意見を参考にはするが、従う必要はない

日本と韓国の決定的な違いは裁判官と裁判員の判断が同等か否かではないでしょうか。評決を取るさい、日本の場合は裁判官も裁判員も一票に違いはありません。しかし、韓国の場合、裁判員が出した結果に対して裁判官は拘束されないため、これに意味があるのか疑問が残ります。日本のように裁判官からの誘導(あるかどうかは分からないが、結果的にそうなる恐れが高い)は比較的しにくい状況だけれども、意見に従わない裁判官ももちろんいるでしょうからなんとも言えないところです。これは映画を見ていて一番びっくりした箇所でもあります。意見が全く反映されなければ時間を取られただけで無駄に感じてしまいますよね。

 

3.日本は被告人に裁判員制度かどうかの選択権はないが、韓国は被告人に選択権がある

こちらは映画では特に触れられていません。日本でも韓国でもどちらも対象事件は重罪事件ですが、日本は被告人に選択権はありません。望むと望まざるとに関わらず、対象事件の場合は裁判員裁判になります。韓国の場合は被告人に選択権があります。裁判官よりは裁判員の方が一般人ということもあり、感情に判断されやすくなります。量刑判断などもあるので、実際に有罪であっても情状酌量を求めやすい事件内容の場合選択する可能性が多くなると予想されます。もちろん逆のパターンもあるとは思いますが。この量形を決めるのも結局は慣例に習う形になりやすいので結局意味があるのか疑問に感じます。参加する人に多少の知識があれば、検察側からの求刑に対して若干やわらげた内容にするのが慣例と思えば事件内容に関わらず、そのような結果になりやすいのではないかと予想されるからです。

 

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映画でも描かれていましたが、結局は国民は皆裁判に関して素人です。そのような人生を歩んできた方が多いからこそ現在の比較的平和な日本が保たれている訳です。そうすると結局プロの判断、もしくは法曹界の慣例に従ってしまうのは仕方がないことなのかもしれません。議論が苦手である日本人に素人が意見の交換を行うのも難しく、声の大きな人の主張が通りやすいのも想像に難くありません。日本人は論理的に考えて、他人に伝える技術を学ぶ必要があります。常日頃から意識して仕事の時だけでも心がけたいところです。

 

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推理小説などの論評で犯人の犯行に至るまでの動機が説得力に欠けるとよく聞きますが、実際の殺人事件で人を殺す誰しもが納得できる理由なんてあるのでしょうか。人は理解し難い理由で人を殺します。偶発的にしろ、計画的にしろ、殺人をおこなってしまう理由は殺人を行わない人には永遠に理解できないのではないでしょうか。もちろん例外はあると思いますが。

 

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ちなみに映画は大変面白かったのですが、最終的な裁判員の判断は甘いなと感じました。別のパターンが考えられますよね。その場合被告人はかなり狡猾な悪人になりますけど。

別の韓国映画を思い出しました。

依頼人(字幕版)

依頼人(字幕版)

  • ハ・ジョンウ
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妻殺しの容疑をかけられた夫の弁護人が主人公です。ラストが秀逸で大変面白いです。

 

映画鑑賞リストを作りたいなと思いつつそのままになっているのですが、最近notionにハマっているので良い加減それで作りたいな。