メキシコの愛と料理のファンタジー

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本を買うきっかけは様々だけど、私の場合は大抵誰かのお勧めだったりする。

この誰かというのは決してリアルな知人ではない。

知人に勧められると読んだかどうかを確認されたり、感想を求められたりと大変苦労する。興味のない本を読んだり、映画を見たりすることが苦痛だからだ。

勧めた当人に気軽につまらなかったと言えるような人間に憧れる。

 

 

この本を手にしたきっかけは吉本ばななのエッセイです。

私は吉本ばななが苦手だった。と言ってもまともに読んだのはデビュー作の「TUGUMI」だけ。

当時中学生だった私が何故この本を手にしたのかは全く記憶にないが、おそらく児童小説への飽きと大人への憧れだったと思われる。他に手を出したのはツルゲーネフの「初恋」とサガンの「悲しみよこんにちは」。

しかし未成熟な感覚しか持っていなかった私には面白さが分からず、身勝手な少女たちに憤慨し、それに振り回される周囲の不甲斐なさに退屈しか感じませんでした。

数年後には谷崎潤一郎の「痴人の愛」などに手を出し始めるので決して嫌いではないカテゴリーのはずだけれど私にはまだ早かった。

 

数年後、本屋で遭遇した吉本ばななのエッセイ「夢について」。

白と青の2色で描かれた原ますみの素敵なイラストが印象的でした。なぜかそのままお買い上げ。この本の中の「食べるということ」で触れられるメキシコの映画「赤い薔薇ソースの伝説」に興味が湧き、なんとか見れないものかと捜索をスタート。

エッセイで紹介されているのは映画ですが、公開はすでに終了しており、レンタルも見つけられないのなら小説を読んでみたいと心惹かれ、なんとか手に入れた本でした。

 

舞台はメキシコ。3人姉妹の末っ子の主人公は家のしきたりで、親が死ぬまで面倒を見なければならず家を出られない。恋人から求婚されるが母親が家のしきたりを理由に断り、代わりに次女との結婚を勧めらる。一緒に住みたいと言う理由で恋人は次女と結婚。恋人と姉の結婚式に作ったケーキを作っている時悲しくて涙が落ちてしまうが、それを食べた人々は皆悲しい気持ちになり涙を流し、新婦は具合が悪くなり吐いてしまう。この導入部分だけでもかなり悲しい気持ちになるけど、料理で気持ちが伝わったり興奮しすぎて火事になったり幽霊が出てきたりしてファンタジー色が濃く、テンポも速いので悲しみに浸る暇がないかも。ラテンですね。しかし翻訳特有の淡々とした文章のおかげで焦燥感に駆られることはなく、落ち着いて読めます。

極端な役どころを割り当てられている登場人物たちとファンタジックなエピソードが合わさって、まるで童話のよう。ストーリーは昼メロですが、家のしきたりで主人公を結婚させなかった母親が死んだ後も幽霊として登場するのはホラーですね。ホラーなんだけど童話なので怖くはない。映像化しがいのあるドラマチックな内容です。

その後映画も見ました。映像美に満足したけど小説の方が好きかな。勝手に想像できるからでしょうか。想像力を補う情報が追加されたことでより勝手に頭の中でイメージしやすくなったかも。

Kindleにもアマゾンプライムにもないのが残念。

 

 

 

実は件のエッセイ本、まだ手元にありました。

殆ど手放して、残ったのは数冊程度の中に残っているのが不思議ですが、表紙が思ったより気に入っていたのかも。

久しぶりに読んでみたけれど、やはりあまり好みではないと改めて感じた。内容ではなく文章の好みなのでこればかりは仕方ない。文章もフィーリングです。

Don't think. Feel!